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ねこと暮らした日




1. 出会い
 14年前のこと、息子を幼稚園に迎えに行く私の足元に飛び出してきて、 小さな体で「吾輩はねこであるぅ」と宣言した猫、それがこの愛し いねこさんです。捨て猫を拾って来たなどと言ったら、気を悪くするに 違いありません。運命の出会いをしたと言っておきましょう。
 それ以来「ねこさん」と呼ばれ、家族の一人ひとりと上手に付き合っ て、元気に暮らしています。でも、猛暑の夏はやはりこたえるらしく 昼間は寝て過ごそうと決めたようでした。 目覚めるとひとり、いえ一匹、西の空を見上げています。


 マンション暮らしゆえ、草むらを走りまわる姿を夢想しているのかも しれません。私はいつもそんなねこさんの肩をもんでやりながら、 「元気で長生きするのよ」と言い聞かせています。  マンションのペット組合の規則で、飼うのを許されているのはこの ねこさん限りです。新しい猫を飼うことはできません。とても寂しいこ とです。だから今日も肩をもんでやっています。「あと10年も20年も 一緒に暮らそうね」と。 (2001・早春)





2. 人の生活と動物の生活と人と動物の生活
 マンションの傍に水路があって小さな橋がかかっています。その橋 の下には放流した鯉がたくさんいます。私は密かに「鳩よせおじさん」 と呼んでいるのですが、毎日鯉にえさをやりに来る人がいます。その えさのおこぼれをもらいに鳩が寄ってきます。
 小さな橋の上にはいつも鳩がたむろしています。人が来ようがバイ クが走りぬけようが平気です。その橋は猫も通ります。散歩の犬も通 ります。もちろん人も通ります。
 マンションでは鳩は害鳥だとして 「鳩よけ」を設置しています。一方では追い払い、また一方ではえさを 与えて寄せ集めています。どちらも人間のしていることです。鳩から 見ればさぞかし人間は不可解な生き物に見えることでしょう。
 人はなぜ生き物を見るとえさをやったりして関わりたくなるのでしょ う?やっぱり人間も生き物の仲間だからでしょうか?あるいは人間は 特別な生き物だからでしょうか? 家の外では他の生き物との交流を 求め、家の中では鳩をはじめ蚊も蝿もゴキブリもあらゆる生き物を 汚いだの害があるだの気持ち悪いだの言いたいことを言って排除し ています。やっぱり人間は不可解ですね。





3. ねこのおしゃべり
 それにしても猫はおもしろいですね。歳をとった猫がこんなにおも しろいとは知りませんでした。とってもおしゃべりになりました。表情 も豊かです。気が向くと傍に来てニャゴニャゴ語で話しかけてきます。
 私もニャゴニャゴ語で答えます。すると目をまんまるにして猫は ますます能弁になります。私も負けずに相槌を打ちます。飽くことなく おしゃべりは続きます。
ニャゴニャゴ・・・、ニャゴニャゴ、ニャゴニャゴ? ニャゴニャゴ !!


 新緑が鮮やかな頃、ねこさんが窓の桟に乗っかって一心に外を見 ていました。そっと忍び寄って覗いてみると、つばめのこどもが5羽 ベランダの縁に並んでいます。
 親つばめが飛んできたかと思うと、いっせいに大きく口を開いてえさを待っています。 親つばめは1羽のこどもにだけえさをやって、また飛んでいきました。 つばめのこどもは根気よくえさを待っています。 順番にしか貰えないのに毎回みんな揃って大きく口を開いて、かわいいのです。
 ねこさんと頭を寄せ合って暫く見てました。 おなかにはまだ産毛を残したつばめのこどもです。 近くに巣を作っていたのでしょうか。この前は鳩が新居の場所を探し に来て、ベランダをうろうろしていました。「ここは駄目ですよ」と、ねこ さんの顔をにゅうっと出して知らせておきました。暫くすると今度は2羽 連れだって下見に来ました。「ここは駄目って言ってるでしょ」と、今度 は息子の顔をにゅうっと出して脅しておきました。  どうやら諦めてくれたようです。





4. ねこさんの一大事
 どうしたことか、お行儀のよいのが自慢だったねこさんが、食卓に飛 び乗って塩鮭に手を・・・。躾にうるさいママが「コリャァァ!!」と言うなり ねこさんの頭をゴツン。不満げな顔をしつつも「…………」すごすご 立ち去るねこさん。


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 食事が済み一休みしているママの向かいの席に、ニョッコリ、ニッコ ニコ顔のねこさんが。すると、とめるまもなく、とつぜん、小鉢の底の 汁をぴちゃぴちゃ!塩鮭の骨をハギハギ! お皿をぺろぉり! 唖然とするママを残し「ごっちょさんでしたぁ」……


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 そして翌日。おなかこわしたねこさんは、暴飲暴食を深く恥じ反省し 一日中絶食。子猫ならいざ知らず、14才にもなろうとする猫が、あき れ果て心配した夏の日の出来事でした。





5. 夏の日
 マンションの近くにJRの高架があります。その土手には夏草が生い 茂っています。そこをねぐらとしている野良さん(私の知り合いです) がいます。トカゲ(私と面識はありません)もよく入っていきます。 野良さんは冬は日向ぼっこしています。夏は草陰で涼んでいます。
でも、そこはちょうど曲がり角になっているため、防犯上は邪魔な草 なのです。先日きれいに刈り取られました。野良さんはどうしている のでしょう?どこかへ避暑にいっているならいいのですが…風の便り も届きません。


 今年の暑さは、我が家のねこさんにも重荷のようです。 「声をかけてもしっぽひとふり」の返事がやっと返ってくるだけです。 扇風機の前で大の字になっています。大目に見てやることにしま しょう。
 マンションのベランダに1匹の蝉が落ちていました。仰向けで 足を振り回してもがいていました。ベランダはアツアツのフライパンの ようです。寝返りが打てるよう手を貸しました。そのとたん、蝉は飛び 去りました。またある日1匹の蝉が落ちていました。もう手足を振り回 す事もなく、その生涯を終えていました。ベランダは相変わらずアツ アツのフライパンです。土の中がいいのか、木の上がいいのか、草 の中がいいのか、どうしたものかと、ねこさんに相談してみたのです が、埒があきません。夏の終わりです。



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